美味しくてリーズナブルな「バローロ」ってどんなワイン?
その秘められた魅力をまるっとご紹介します!
イタリアンワインの名門であり、「ワインの王様」「王様のワイン」と評されるバローロ。なぜこれほどまでに名声を得ることができたのでしょうか?そもそもバローロとはどんなワインなのでしょうか?
今回はバローロの特徴や歴史、おすすめのワイン、料理のマリアージュまで、徹底的に解説します。ぜひ、ワインの王様を味わい、王様気分を味わってみましょう。
王のワイン「バローロ」ってどんなワイン?
バローロとはイタリアのピエモンテ州バローロ村周辺で造られる赤ワインのことです。バローロ村はイタリアの北西部に位置し、アルプス山脈に囲まれた標高300m以上の丘陵地帯にぶどう畑が広がり、野鳥や野生動物も数多く見ることができる自然豊かな村です。非常に景観が美しく、バローロ村を含むピエモンテ州一帯の「ぶどう畑の景観」は2014年にユネスコの世界遺産に登録されたほどです。
ピエモンテ州は古くからワインづくりが盛んで、トスカーナ州とならんでイタリアの2大醸造地として知られています。とりわけバローロ村で造られるワインは最高位であるD.O.C.Gに格付けされていて、イタリア国内はもとより世界中のワイン愛好家から「ワインの王様」「王様のワイン」として愛されています。
バローロを名乗る条件!格付け機関が定める基準とは?
イタリアにおいてもフランスと同様に法律でワインの格付けがなされていて、「Vino」「I.G.T」「D.O.C」「D.O.C.G」の4つの等級があります。バローロが最上級であるD.O.C.G(Denominazione di Origine Controllata e Garantita:統制保証付原産地呼称ワイン)に格付けされているのは前述のとおりです。
最上級とされているがゆえに、バローロと名乗るためにはさまざまな条件を満たさなければいけません。その条件はやはりバローロで造られていることとネッビオーロ種を使っていること。そして、最低38ヶ月(3年2ヶ月)は熟成させ、アルコール度数が13%以上でなければバローロと名乗ることはできません。こうした厳しい規制を守ることで、ワインの王様の品格を保っているのです。
ちなみに、イタリアでは長期熟成させたワインは「リゼルヴァ」と名乗ることができますが、バローロでリゼルヴァを名乗るためには62ヶ月(5年2ヶ月)熟成させる必要があります。
バローロの元となるネッビオーロ種ってどんなブドウ?
バローロの原料には「ネッビオーロ種」というぶどう品種が使われています。ほかのぶどうよりも収穫期が遅く、霧が多い11月ころに収穫されることから、イタリア語で霧を意味する「Nebbia」が由来となっていると言われています。酸味が強くタンニンが多く含まれているため渋みもあり、長期熟成させるとしっかりとしたコクや力強さが味わえるワインとなります。
ただし、同じネッビオーロ種でも育つ土壌によって異なります。土にミネラル分や石灰が多く含まれるバローロ村で栽培されるものは比較的エレガントな味わいに、一方でバローロの東に位置するセッラルンガ・ダルバ村付近の鉄分を多く含んだ泥粘土質の土壌で育ったネッビオーロ種はスパイシーな味わいになります。
気になるバローロの味わいは?
前述のとおり、渋みと酸味が強いネッビオーロ種を長期熟成させたバローロは力強い味わいが特徴です。見た目はルビーのような濃い赤色。木樽で熟成させているため、木やドライフラワー、あるいは鞣し革のような独特かつ複雑な香りと、一口含むとずっしりとした渋み、苦味、コクを感じることができます。
比較的軽めな飲み口のものが多いイタリアンワイン。若いワインでは出せない濃厚で男性的な格調高い風味が、「王様のワイン」と呼ばれる所以です。
実はリーズナブル?数千円からの銘柄もあり
D.O.C.Gという最高ランクに格付けされていて、世界中からも評価が高いバローロ。「さぞ高いのでは?」と思われるかもしれません。確かに著名な造り手のものは1本数万円が相場。中には5万円以上という高値がついているものもあります。しかし、安いものだと2,000円程度。平均的には5,000円くらいで、1万円あればほとんどのものが買えます。
味が良くて世界的に評価も高いのに、手頃な価格で肩肘張らずに楽しめるのも、バローロの魅力と言えるでしょう。威張りすぎず気取りすぎず、民衆に優しく親しみやすい。バローロはそんな王様なのかもしれません。
バローロの当たり年はいつ?
ワインのおいしさは原料のぶどうの出来によって左右されます。特にぶどうの生育状態が良い、質が高いワインが出来上がった年を「当たり年」と言います。バローロの場合は2012年が大当たりの年でした。翌2013~2015年も当たり年。もう少し遡ると、2008年、2006年、2005年も当たり年とされています。ちなみに2002年、1994年、1992年は不作の年とされています。
ワインを選ぶ際にはぜひ当たり年も参考にしてみると良いかと思います。ただ、当たり年でなくても品質が悪いというわけではありませんので、ご安心ください。
味と製法は生産者ごとに違う!?バローロの伝統派とモダン派について
前章でバローロの味や香りについて解説しましたが、「バローロとはこういうものだ」とひとくくりにすることはできません。同じ料理でも作り手によって違うように、ワインの味や香りも製法や生産者によって大きく異なるからです。
とりわけ、バローロの生産者は伝統的な製法にこだわる「伝統派」と、新しい技術やノウハウを積極的に取り入れる「モダン派」の2つの派閥に大きく分けられます。ここからはそれぞれの製法や味の違いについて見ていきましょう。
伝統派
バローロの特徴は長期間熟成させること。もともとバローロは30~60日間熟成させてぶどうの皮や種子から渋み成分を抽出させる「マセラシオン」という期間を経て、さらに大樽で4~8年間熟成させ、タンニンを柔らかくしてから瓶詰めするという手法で造られてきました。
非常に長期間に渡って熟成させるため、ぶどう本来の果実味はほとんど残っておらず、ドライフルーツや葉巻のようないぶし銀の香り、あるいは大樽のウッディーな香りが特徴的。色も酸化が進み、少し黄色みがかかっています。前述のとおりタンニンが多く含まれているので、非常に苦味や渋味が強い、辛口のワインに仕上がります。当時はこのようなワインが好まれていました。
この製法は170年くらい前から取り入れられており、イタリアの王族も愛飲していたと言われています。王様のワインが出来上がるまでには非常に長い時間と生産者の手間暇がかかっているのです。
しかし、20世紀に入ると恐慌や戦争によって品質が低下し、価格も下落しました。それに加えて人々の価値観も変容し、これまでの長期熟成された渋みが強いワインよりもフルーティーな香りが感じられる飲み口が軽いワインが好まれるようになり、王のワインという名声に陰りが出てきたのです。
モダン派
1960年代。レナート・ラティやアルド・コンティルノといった「バローロボーイズ」と呼ばれる生産者が台頭するようになります。彼らはフランスのボルドー地方やブルゴーニュ地方で本場のワイン造りに触れました。これまでの伝統的な製法や渋い・辛いワインは時代遅れとし、フランスの醸造技術を活かして、バローロの地で新しい生産スタイルを確立するのです。
30~60日間かかっていたマセラシオンは温度管理を徹底した上で数日~2週間程度に、大樽を使った4~8年間の熟成期間はフレンチオークの小樽で1年半~2年程度に短縮。さらに、発酵・マセラシオン期間中には短期間でもしっかりと色が出るように、色素が抽出できる回転式の発酵タンクを用いることもあります。
伝統的な製法で造られたバローロと比較するとフレッシュな果実の香り、味が感じられ、渋みや苦味がそれほどない軽い飲み口となりました。この新しいワインが再度バローロの人気に火をつけ、王様のワインという名声が復活したのです。
伝統を守り昔ながらの手法にこだわる伝統派、新しい技術を導入し時代に合わせたワイン造りを行うモダン派。どちらが優れている・劣っているということはありません。それぞれのワインに良さがあります。
ちなみに今は伝統派とモダン派の両方の製法を取り入れた「中間派」という派閥も増えてきています。
バローロのワイン生産の歴史を紹介!
バローロのワインの歴史は13世紀まで遡ります。当時からすでにワインの原料であるネッビオーロ種が栽培されていたことが文献に記されています。しかし、今のような熟成させた辛口ワインではなく、果実味がある微発泡性の甘口ワインが造られていたと考えられています。
19世紀にイタリアが統一されバローロのワインの歴史も大きな変革を迎ええます。イタリアの初代首相となるカミッロ・カヴール伯爵がフランスからワインの造り手であるルイ・ウダールを呼び、大樽で長期間熟成させる伝統派の製法が広まりました。宮廷でワインが提供されたことから、「王様のワイン」「ワインの王様」と呼ばれるようになり、1900年以降は一般庶民にも普及。万博などでも出品され、イタリア国内はもとより、世界中に名声が広がったのです。
しかし、前述のとおり恐慌と2度の世界大戦によって伝統的な製法では品質が担保できず、人々の価値観の変容もあってバローロの人気は下落。そこで、1960年にモダン派が台頭し、新しい技術と新しいワインを確立した結果、バローロの名声が復興しました。当時は伝統派、モダン派が対立していましたが、現在ではお互いが尊重し、生産者によっては両者の良い所を取り入れ、伝統を受け継ぎながら進化を続けています。
おすすめワインとすぐに用意できるおすすめ料理のご紹介!
最後にバローロのおすすめワインを厳選して3本ご紹介します。いずれも比較的お手軽な価格で買えておいしく楽しめます。ワインの特徴やおすすめのおつまみ・料理についてもご紹介しますので、ぜひワイン選びの参考にしてください。
食事と一緒に楽しみたいミディアムボディのバローロ
バルデッラ・バローロ / テッレ・ダ・ヴィーノ
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1980年に農家と生産者協同組合が合同で立ち上げたテッレ・ダ・ヴィーノ社の代表的なラインナップです。バローロをはじめて楽しまれる方におすすめ。お手頃価格でコスパが高く、長期熟成されたワインが多いバローロの中でも比較的軽めで飲みやすいです。
ブラックチェリーやプラムのような果実と、オーク樽の木の香りがほのかに漂います。渋みや酸味は控えめで口当たりがよく、「バローロに興味はあるけどあまり重たすぎるワインはちょっと……」というワイン初心者の方や女性の方でも手軽に楽しめるでしょう。
どんな料理にも合いますが、やはり赤ワインなのでポルチーニリゾット、ビーフシチューやステーキといった肉料理にぴったり。食中酒や晩酌用として、1本ストックしておいてもいいかもしれません。
「ラヴェラ」のぶどうのみで造られたバローロ
2015 ロ ゾッコライオ・クリュ・ラヴェラ・バローロ
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単一畑「ラヴェラ」のぶどうのみで造られた、クリュ=畑名入りのバローロ。エステート・ロ・ゾッコライオ は標高350mの丘陵地にある、バローロの典型的な農場で、大きな白い有名な木、命の木を意味する「ゾッコライオ」が名前の由来です。
バローロの特徴であるダークチェリーやプラムといったフルーツの風味に加え、ミネラルやスパイスをほのかに感じられる、溢れるような豊かさと広がりのある香りが楽しめます。輝きのあるガーネットの色合いも美しく、特別な日のテーブルにふさわしいフルボディの赤ワインです。
コクがありながら、タンニンは控えめでソフトな味わい。余韻も長く楽しめます。「サクラアワード」の最高賞であるダイヤモンドトロフィーを2022年度に受賞。上質な赤身肉の料理やトリュフ料理、熟成されたチーズなどとのペアリングが楽しめます。
クラシックシャトーで造られた熟成バローロ
カンティーヌ・サンタ・ヴィットリア・バローロ / サンタ・ヴィットリア
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スラヴァニア(クロアチア)とフランス産オークの大樽で2年間、その後瓶内で1年間、合計3年間じっくり熟成させるという伝統的な製法で造られていて、バローロらしいしっかりとしたボディとストラクチャが楽しめます。バローロのテロワールをもっともよく表現されている1本と言っても過言ではありません。
グリーンブーケ、ドライフラワーや枯れ葉、森の下生えのような豊かな風味。程よい渋みと酸味、果実味が味わえる、コスパとバランスが良く、初めてバローロワインを飲まれる方からワイン通の方まで楽しめるバローロワイン。リーズナブルでもしかりバローロの真髄が味わえると評判です。ステーキやトーストビーフ、ビーフシチューといった赤身肉の料理全般にぴったり。各種チーズともよく合うので晩酌にもおすすめです。
”王様のワイン”バローロを是非一度お試しください
しっかりと熟成されて、複雑な香りと強い味わいが楽しめる、イタリアワインの中でも最高峰に位置するワインの王様、バローロ。またフランスワインとは少し違った魅力があります。その深い風味には伝統を守りつつも、新しい技術を取り入れて独自に進化してきた歴史が凝縮されているのです。
AEON de WINEではバローロも多数取り揃えています。この記事を読んで「バローロを飲んでみたい」と思われた方は、ぜひチェックしてみてください。