毎年のお楽しみ!
ボージョレ・ヌーヴォーがよりおいしくなる豆知識!
毎年11月になると解禁のニュースがテレビやネット、新聞などで盛んに報道されるボージョレ・ヌーヴォー。毎年この時期を首を長くして楽しみにしているワイン愛好家の方はもとより、そうでない方も一度は名前を聞いたことのある、日本で一番有名なワインと言っても過言ではありません。
今年のボージョレ・ヌーヴォーの解禁日は2024年11月21日(木)です。
本記事では11月の解禁日を前に、そんなボージョレ・ヌーヴォーをもっと楽しむための豆知識をご紹介します。
フランスのボージョレ地区で作られる"出来たて"のワイン
「ボージョレ」とはフランスのボージョレ地区のこと。「ヌーヴォー」とは「新しい」を意味するフランス語。つまり、ボージョレ・ヌーヴォーとはボージョレ地区で造られるワインの新酒のことです。
フランス中部ブルゴーニュ地方の南部に位置するボージョレ地区はリヨンの北側に位置し、西にロワール川、東にソーヌ川と河川に挟まれた丘陵地帯となります。
温暖で夏季の雨量が少ない地中海性気候と1日の寒暖の差が激しい大陸性気候の両方の性質を持ち合わせ、花崗岩土壌が広がる温暖な気候です。
特にガメイ種の栽培が盛んでフランス国内のシェアの半数以上を占めています。ボージョレ・ヌーヴォーもブルゴーニュ地方の気候と土壌で育まれたガメイ種を原料に造られています。
AOCワインを生産する村が10ほどあり、ぶどう畑の中に昔ながらの建物が点在する風光明媚な景色が広がり、ぶどう農家やワインの生産者、レストランやホテルを営む人が多く、訪れた人をあたたかく出迎えてくれる。そんな牧歌的な地域でボージョレ・ヌーヴォーは造られています。
特殊な製法が生み出すフレッシュな味わい
他のワインとは一線を画した特別なワイン、ボージョレ・ヌーヴォーは、先ほどもご説明したとおり、ボージョレ地方のガメイ種というブドウを使って造られる新酒。渋みが少なくて、フレッシュな果実味が味わえるのが特徴です。いちごキャンディやカラメルを思わせる甘い香り、軽いボディはワインに飲み慣れていない方や女性にもオススメです。
通常、ガメイ種の収穫は9月に行われますが、普通のワインと同じ製法で造っていたら、11月の解禁日には間に合いません。そんな事情もあって、ボージョレ・ヌーヴォーは「マセラシオン・カルボニック」という特殊な製法が採用されているのです。
まずは収穫したブドウの果実を潰さずに、まるごと醸造タンクに詰めると、ブドウの重みで果実が自然に潰れていきます。やがて、発酵してくるとタンク内に炭酸ガスが発生して圧力が生じることで、さらに果実が押しつぶされて発酵が進んでいくというサイクルが生まれ、短い期間でもワインの醸造が可能となります。
炭酸ガスによる圧力で鮮やかな色素と果実の旨みがワインに染み出すから、フレッシュな色合いのフルーティなボージョレ・ヌーヴォーが楽しめるのです。
ボージョレで造られるワインの特徴
ボージョレ地区では赤ワイン、ロゼ、白ワインいずれも生産されていますが、赤ワインが圧倒的に多く、白ワインが全体に占める割合は1%以下。ほぼ赤ワインが占めていると言っても過言ではありません。
行政上はブルゴーニュ地方に属していますが、ブルゴーニュワインとはまた違った、独特の個性を持ち合わせています。やはり、その要因となっているのは原料であるガメイ種にあります。黒ぶどうでありながらも酸味が強く、渋みが弱い特性があるため、ボージョレ・ヌーヴォーをはじめボージョレ地域で生産されるワインはさっぱりとした、フレッシュ感あふれる風味のものが多く、長期熟成させるよりも新酒のほうがおいしく楽しめます。
赤ワインの渋みや苦味が苦手な方、少しずつ赤ワインに慣れていきたい初心者の方、ぶどう本来のフレッシュ感や果実味を楽しみたい方に、フレッシュなボージョレワインは特にオススメしたいワインです。
ボージョレワインの種類
先ほど、ボージョレ・ヌーヴォーはボージョレ地区で造られるワインの新酒だということをご説明しました。しかし、ボージョレ地区で造られるワインなら何でもいいというわけではありません。赤ワインとロゼのみで、白ワインはボージョレ・ヌーヴォーを名乗ることができないのです。
さらに、その年にボージョレ地区で収穫されたガメイ種を使ったものだけがボージョレ・ヌーヴォーを名乗ることが許されます。フランスワインのブランド価値を守るために、こうした法律が作られました。
ボージョレワインの品種
ボージョレ・ヌーヴォーの原料であるガメイ種は黒ぶどうと呼ばれる赤ワイン用のぶどうです。一般的な黒ぶどう品種と比べると粒が大きめで、色が若干明るいです。タンニンの含有量が少なめで渋みはそれほどなく、さわやかな酸味が強めです。
特にボージョレ・ヌーヴォーは前述のとおり、ほかのワインと比べるとぶどう本来のフレッシュな果実感を味わうことができます。
ガメイ種はフランス国内各地、あるいはトルコ、東ヨーロッパでも栽培されていますが、やはりボージョレが最大の産地。豊かな土壌と寒暖差が大きい気候が、うまみと香りがギュッと凝縮された良質なガメイ種を育みます。
ワンランク上のボージョレ・ヴィラージュ
ボージョレ・ヌーヴォーには、「ボージョレ・ヌーヴォー・ヴィラージュ」と呼ばれるワインがあります。「ヴィラージュ」は村という意味で、ボージョレ地区のよりぶどう栽培に適した地域で造られています。生産地域が限定され、生産量も少なく、ワンランク上のヌーヴォーと言われています。
ヴィラージュのワインは、ブドウがよく成熟するため、より力強い味わいが楽しめます。新酒としてだけでなく、熟成することも可能なポテンシャルを秘めています。
なぜここまで騒がれる?ボージョレ・ヌーヴォーの歴史
そもそもボージョレ・ヌーヴォーの解禁日はワイン業者がその年の新酒の出来栄えを試す日であり、今ほどの盛り上がりはなかったようです。諸説ありますが、もともと新酒ができる時期は農民たちの収穫祭の時期と重なっていたようです。そこで、ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日をお祭りムードに合わせて、大々的に売り出そう、PRしようというワイン業者の販売戦略があったと言われています。
日本では製菓メーカーや小売店がバレンタインデーにチョコレートを贈る文化を根付かせたとされていますが、それと同じようにボージョレ・ヌーヴォーの解禁日も一大イベントとして成長してきたと考えられます。
毎年必ず、ボージョレ・ヌーヴォーの解禁が話題になる理由
もはやボージョレ・ヌーヴォー解禁のニュースは秋の風物詩となっています。では、なぜこれほどまでに話題になるのでしょうか?
それは名前のとおり、ボージョレ・ヌーヴォーがフランスで一番早く出荷される新酒で、その出来を見れば、その年のフランスワインの出来がわかるからです。もともと業者が解禁日に仕入れなどを判断するために、ボージョレ・ヌーヴォーを試飲していました。また、フランス国内では前述のように収穫祭が行われるため、「収穫祭をお祝いする新酒」という意味合いもあります。
やがて、収穫後にすぐに飲める新酒ということで、世界中から注目されるようになったのです。
解禁日が存在する理由
ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日は毎年11月の第3木曜日です。もともとは聖人の日「聖マルティヌスの日」である11月11日が解禁日でした。しかし、フランスでは「終戦の日」と被るということで、別の聖人の日である11月15日の「聖タルベールの日」に変わりました。
しかし、フランスでは土日を定休日としている小売店が多く、11月15日が土曜日や日曜日だと解禁日にボージョレ・ヌーヴォーが買えなくなってしまいます。そこで、聖人の日に近い11月の第3木曜日が解禁日となったのです。
また、一斉に販売を開始するタイミングが決められている理由として品質の維持が挙げられます。生産者や酒屋さんなど業者の立場からすると、新酒を少しでも早く販売して利益を上げたいと考えるものです。しかし、過当な競争が起こることで、品質が低い商品が市場に流通する恐れもあります。
品質を確保するためにフランス政府が1984年にボージョレ・ヌーヴォーの解禁日を11月の第3木曜日に決めたのです。
世界一の輸入量!日本で人気なその秘密とは?
特に日本ではボージョレ・ヌーヴォーの解禁日は毎年ニュースでも取り上げられ、キャッチコピーもつき、大変な盛り上がりを見せます。世界で最もボージョレ・ヌーヴォーの輸入量が多く、ピーク時には1250万本を誇っていました。
他国では数百万本ですので、輸入量だけ見てもいかに日本人がボージョレ・ヌーヴォーの解禁に熱狂していることがわかります。でも、なぜフランスから遠い日本でこれほどまでにボージョレ・ヌーヴォーブームが興る(おこる)のでしょうか?それには日本人の気質と地理的要因が関係あるとされています。
新しいモノ好きな気質にマッチ?
日本人は新しいモノ好きです。海外から常に最新のモノ・コトを取り入れ、独自の文化や技術を発展させてきました。加えて車は中古車よりも新車のほうがいい、家も新築のほうがいいといった価値観も強い傾向があると言われています。日常生活の中でも「新商品」「新発売」と書かれた商品を見ると、ついつい手にとってしまうという方もいらっしゃるかと思います。「新酒が飲める」という真新しさと特別感が、日本人にぴったりマッチしたのではないかと思われます。
また、日本の立地も大きく関係しているようです。ボージョレ・ヌーヴォーの解禁が「11月の第3木曜日」であるのは世界共通です。日本とフランスの時差は8時間。本場のフランスよりも日本のほうが8時間早くボージョレ・ヌーヴォーが飲めるのです。こうした事情もあって、日本でボージョレ・ヌーヴォーの解禁が盛り上がっていると考えられます。
年に一度のお祭りを楽しみましょう!
今年ももうまもなくボージョレ・ヌーヴォーが解禁となります。どんな出来になるのでしょうか?今から非常に楽しみです。ワイン愛好家の方はもちろん、ワイン初心者の方、今まで興味がなかったという方も、今年はいち早くボージョレ・ヌーヴォーを味わってみてはいかがでしょうか?11月の第3木曜日は要チェックです。
この記事でご紹介した豆知識を思い出していただき、より美味しくボージョレ・ヌーヴォーが楽しんでいただけるかと思います。