美味しいだけじゃないスパークリング!
リンゴの力が詰まったシードルをたっぷりご紹介します
りんごを発酵させてつくるお酒、シードルをご存じでしょうか。欧米においては古くから親しまれ、支持される醸造酒のひとつです。このところ日本でもシードル人気がじわじわ高まってきているのです!ブームの兆しを見せるシードルの特長とその知られざる魅力をたっぷりご紹介します。
シードルとは
ワインは、ブドウを発酵させてつくるお酒です。シードルもワイン同様、りんごを発酵させてつくります。またワイン同様、多くのポリフェノールやミネラル類を含有しています。一方、アルコール度数は2~8%とワインより低いのが特長です。
シードルづくりは、収穫したりんごを選果して洗うところからスタートします。その後、りんごを細かく砕き(破砕)、果実を押しつぶして(圧搾)ジュースを絞り出します。次に絞り出したジュースをタンクや樽に入れ、発酵に移ります。発酵時間は最低でも3カ月~、じっくりと熟成させてシードルが完成します。
りんごが原料のため、甘みのある印象が強いシードルですが、甘口から辛口まで味のバリエーションも豊富。さっぱり、さわやかなテイストが人気の理由でもあります。
世界では「シードル」とは言わない?
欧米では長い歴史を持つ「シードル」。古くからつくられているのがフランスのブルターニュ地方、ノルマンディー地方でした。「シードル」の味と製法が、フランスからイギリス、欧州各国から世界へと広まっていきます。イギリスやニュージーランドでは「サイダー」、ドイツでは「アップフェルヴァイン」と呼び名が異なります。イタリアでは「シドロ」、アメリカでは「ハードサイダー」の名で知られています。
シードルの4つの種類
一般的に知られるシードルといえば、スパークリングワインのような発泡タイプです。発泡タイプを含め、実は4タイプのシードルが存在します。発泡しないスティルタイプ、凍らせたりんごでつくるアイスシードル、最後はりんごの果汁に他の材料を加えて香り付けするフレーバード・シードルです。フレーバード・シードルはイギリスに多くつくられ、果実(ベリー等)やスパイス(ハーブ・ジンジャー等)で味わいをプラスする個性的なタイプのシードルです。
シードル専用のりんごがある?
シードル人気が高まる中、日本でもシードルづくりを手がける農家・醸造所が増えています。メイドインジャパンのシードルでは、食用りんごを用いるのが一般的です。対してシードル本場のヨーロッパでは、ほとんどの場合「シードルアップル」というシードル専用のりんごを使います。食用品種よりも酸っぱかったり、少々渋かったりするものがシードルの材料となります。
ところでフランスでは、シードルアップルのテイストは「甘い」「渋くて甘い」「渋い」「酸っぱい」と分類されます。一方イギリスは「甘い」「渋くて甘い」「渋くて酸っぱい」「酸っぱい」と微妙に分け方が異なります。同じ欧州でも、嗜好に差があるというのも面白いですね。
シードルの豊富な健康効果
口当たりもやわらかく、さわやかで飲みやすいシードル。りんごが原料であることから、ポリフェノールやミネラルなどが含まれ、健康効果でも注目されています。さらにビール好きを悩ますグルテンフリーやプリン体もフリーで、ヘルシーなの魅力的。シードルの持つ健康面でのメリットについて調べてみました。
原料のりんごが持つ恵みは、シードルにも受け継がれています。シードルに含まれるリンゴ由来のミネラル類であるカリウムは、余分な塩分の排出を手助けする作用を持っています。またミネラル以外にも、シードルはビタミンやポリフェノールを含有しており、免疫力アップにつながる働きが期待できるのです。
りんごには、水溶性の食物繊維も含まれています。水溶性の食物繊維は、腸内善玉菌(ビフィズス菌など)を増やす働きをしてくれるため、腸活の促進にもつながります。またシードルは、酵母や乳酸菌で発酵させてつくられる発酵食品です。発酵食品も腸内善玉菌をサポートし、腸の調子を整える働きを持っていると言われています。
りんごは豊富な栄養価を持つ果物であり、中でもポリフェノールを多く持つことが知られています。ポリフェノールにはさまざまな種類があり、りんごは抗酸化作用を持つプロシアニジンが多く含まれます。抗酸化とは、活性酸素の発生や働きを抑えたり、取り除いたりする作用のことです。つまりりんごのプロシアニジンには、肌荒れやシワなど老化を防ぎ、美肌を守るパワーを秘めているのです。
プロシアニジンは、りんごの皮部分に多く含まれています。皮も果実も摂取できるシードルなら、たくさんのポリフェノールを摂取できるのです。
シードルにはこの料理が合う!
軽い口当たりのシードルは、食前酒としての飲み方が定着しています。しかしシードルは、魚や肉などのメインに合うものから、食後のデザートとして楽しめるものまで多種多様。ワインと同じく、幅広い味わいを持つシードルはどんな料理にも相性抜群です!シードルのテイスト別に、ピッタリの料理をご紹介します。
甘口シードル
りんごの甘いイメージと同様、シードルにもスイートな「甘口」の印象をお持ちの方も多いでしょう。シードルは、一般的に発酵期間が短いほど甘くなると言われています。そんな甘口シードルンには食前酒としてはもちろん、食後のデザートのお供にもおすすめです。本場フランス・ブルターニュ地方では、シードルとそば粉を使ったクレープ「ガレット」を一緒に楽しむスタイルが定番です。甘口シードルは、フルーツタルトなど洋菓子のみならず、羊羹や栗きんとん和菓子とも好相性です。
中辛口シードル
甘口と辛口の中間にあたる中辛口シードルは、肉料理、特に豚肉料理とのマリアージュが抜群です。すっきりとした甘さと、適度なコクが肉のうまみを引き立てます。特に煮込み料理と中から口のシードルは好相性です。中辛口はマイルドな風味ですから、豚肉料理だけでなくローストしたチキンや、魚料理、チーズなど多くの料理と一緒に楽しめます。オールマイティに合わせられるのが中辛口シードルの魅力といえるでしょう。
辛口シードル
りんごのテイストがほんのり、主張しすぎない辛口シードルはフレッシュな魚介類にピッタリです。定番のカルパッチョや刺身、お寿司などのペアリングもおすすめです。野菜との相性もよく、少しワイルドな風味のハーブやわさび、癖のある野菜などをナチュラルに味わえます。辛口シードルは料理の邪魔をしないため、食事中に気軽に楽しめるのもポイント。和食からスパイスの利いた中華やエスニックまでしっくりくる、奥深い味わいが特長となっています。
世界中で愛されるシードル
りんごを原料にしたシードルは、世界中で愛され、親しまれるお酒です。国によって呼び名が異なりますし、その楽しみ方も地域によってさまざまです。かしこまった楽しみ方から、カジュアルに飲む国まで、各国のシードルスタイルはさまざま。飲み方を含めたお国ごとのシードル事情をピックアップして解説します。
フランス
ワイン王国といわれ、古くから国内各地でワインづくりがさかんなフランス。しかし気温が高く、ブドウ栽培には適さないといわれる地方もありました。北西部のブルターニュ地方とノルマンディー地方です。2つの地域ではブドウにかわり、りんご栽培が発展をとげました。
フランスでは、品質や製造過程など特定の条件のもとに与えられるAOC(原産地呼称統制)があり、この基準を満たした製品のみが「シードル」を名乗っています。フランス産シードルは、甘みだけでなく、酸味や苦みのあるりんごをブレンドして生産されます。しつこくない甘さで、アルコール度は3~5%程度と飲みやすさが際立つシードルです。
イギリス
イギリスで「サイダー」といえば、フランスでのシードル、りんごのお酒を指します。かしこまった場ではなく、日常的に飲まれていることが多いようです。ビール同様、「サイダー」もイギリス人の暮らしに根付いています。
普段からよく飲まれていることもあり、イギリスは世界一のサイダー(シードル)市場でもあります。フランスのシードルに比べるとアルコール度数は高めな傾向にあり、5~8%が一般的です。イギリスのサイダーはドライでのどごしがよく、こってりした揚げ物とも好相性です。
スペイン
スペインでのシードルは、「シドラ」と呼ばれます。スペイン北部が主な産地となっています。産地では専門のシドレリアというバルもあり、シドラは古くから親しまれてきました。本場のバルでは、シドラを高所から勢いよく注ぐスタイルが有名です。りんごの風味が強く、酸味の存在感が強いのが特長となっています。アルコール度数は4~6%まで幅がありますが、お酒が苦手な人にも飲みやすい、マイルドなシドラも多く製造されています。
スペインでのシードルは、「シドラ」と呼ばれます。スペイン北部が主な産地となっています。産地では専門のシドレリアというバルもあり、シドラは古くから親しまれてきました。本場のバルでは、シドラを高所から勢いよく注ぐスタイルが有名です。りんごの風味が強く、酸味の存在感が強いのが特長となっています。アルコール度数は4~6%まで幅がありますが、お酒が苦手な人にも飲みやすい、マイルドなシドラも多く製造されています。
アメリカ
アメリカでも17世紀頃からりんごのお酒がつくられてきました。イギリスと同じく「サイダー」、特にアルコールを含むものを「ハードサイダー」といいます。近年、ハードサイダーはあまり飲まれなくなっていましたが、クラフトビールの流行と同時に人気再燃。職人こだわりのクラフト・ハードサイダーが続々登場しています。りんごだけでなく、ベリーやアプリコット、ホップなどバラエティに富んだハードサイダーが人気です。
日本で徐々に来ているシードル人気
世界中で飲まれているシードルですが、日本ではまだマイナーな存在です。ただりんごの産地を中心に、メイドインジャパンのシードルが誕生し、マーケットも盛り上がりを見せています。最近は日本各地でこだわりの国産シードルがつくられるなど、新たな局面を迎える日本のシードル市場の今をお伝えします。
東北でのシードル醸造所の増加
日本有数のりんごの産地である東北地方には、たくさんのシードル醸造所が集まっています。1938年、青森県弘前市でスタートしたシードルでしたが、当初はそれほどのひろがりをみせませんでした。ところが平成には醸造所が大きく増え、近年はさらに数を増やしています。
きっかけは、2008年に東北を襲った大規模なひょう害でした。ひょうによりりんごが傷つき、生食用の出荷が難しくなったのです。見た目は傷んでいても、中身はおいしい東北のりんごを有効利用するため、加工への活路を見いだす必要に迫られたのでした。それ以外にも、次のような理由で、東北でのシードル醸造所増加が進んでいきます。
- 加工用のりんごの利用価値が高まったこと
- ワイン人気でワイナリーは増えたものの、原料のブドウが不足。りんごを使ったシードルの存在が浮上したこと
- シードルの一般的な認知度アップ
日本シールドマスター協会の発足
りんごの産地である東北エリアを中心に、信州エリアや北海道でも国産のシードルづくりに取り組む醸造が増加しています。世界的なブーム再燃、国産品の登場とともに知名度もアップ、日本国内でのシードル人気は高まる一方となりました。とはいえ、日本ではなじみの薄いシードルだけに、より多くの正しい情報が求められるようになりました。
そこで、2015年発足したのが一般社団法人日本シードルマスター協会です。現在では、『世界各国のシードルやリンゴの文化を正しく理解し、情報提供をおこなえる人材』(出典:日本シードルマスター協会https://jcidre.com/cca/)を輩出するため、シードルアンバサダー認定試験も実施しています。日本でのシードルの普及、正確な情報を広く伝えるために、尽力しています。
今後シードルにかかる期待
盛り上がりを見せる日本のシードル市場ですが、大きく3つの課題があります。まずはシードルそのものの知名度がまだまだ低いという点です。シードルが知られていないため、販路が広がらないと頭を抱える生産者もいます。特に国産シードルの存在自体を知らない人も少なくないでしょう。
2つめに、生食用に比べ、加工用のりんごの原価が低く、原料確保が不安定になってしまうことです。3つめは、りんご生産農家そのものが減少し続けているという大きな課題です。
課題に対して、シードル生産地でも多彩な試みをはじめています。例えばシードルツーリズムのような世間の注目を集めるイベントを行ったり、シードルマップを作成したり多彩な企画で知名度アップを図っています。原料や味にこだわった高い価格帯のシードルを販売し、販路拡大や加工用りんご確保にもつなげています。シードル人気が高まり、安定した経営が続けていけるようになれば、りんご農家への新規参入者が増えるのではないかと期待されています。
おすすめのシードル3選
多面的な魅力がいっぱいのシードル。一度、飲んでいただければ、シードルのよさをさらに実感していただけるはずです!そこで、シードルの魅力を存分に味わえる3本をご用意しました。イオンdeワインでも購入可能な、選りすぐりのシードルワインをぜひお試しください。
フランス北部ノルマンディー産のシードル専用のりんごを使った軽やかなテイストのシードルワイン、ラシャス。一番搾りのりんごを醸造しているだけあって、フレッシュでみずみずしい清涼感を味わえます。サーモンのタルタルやカボチャとクルミのサラダなど強い香りを持つ料理のおいしさを引き立てるので、毎日の食事にもピッタリです。砂糖、香料不使用で、りんごの風味をダイレクトに感じられる1本です。
話題の国産シードルからは、日本人になじみの深いりんご「ふじ」を使った2018 喜多方シードル / レスカルゴをご紹介します。丁寧に優しく搾った福島県喜多方市産りんごを、低温でじっくり発酵。手間をかけた瓶内二次発酵のシードルは果実感たっぷり、柔らかで細かい泡か感じられます。低アルコールで飲みやすいので、シーンを選ばずに飲めるのもうれしい。ふんわりやさしいりんごの芳醇な香りを、普段使いで楽しめるおすすめのスパークリングワインです。
りんごの本場、青森県弘前市にある「タムラファーム」と京都「丹波ワイン」の2つの職人がタッグを組み、こだわって完成させた1本が青森県弘前産シードル / 丹波ワインです。サンふじ、王林、紅玉やジョナゴールド等をさまざまなりんごをブレンドし、高い糖度を持ちながら酸味も感じられる繊細なテイストを実現。フルーティな香りときめ細やかな泡立ちが立ちのぼる至極の逸品です。アルコールが苦手な方にも飲める軽やかさも魅力となっています。
シードルでいつもと少し違うひとときを
りんご本来のほんのりとした甘さと、さわやかな風味が飲みやすいと注目のシードル。フランスをはじめ、イギリス、アメリカなど世界中で親しまれています。それぞれの国オリジナルのシードルを味わえる面白さがあります。さらに、最近では職人たちがこだわり抜いた日本産のシードルも続々誕生し、市場は活気を帯びています。
シードルは味のバリエーションも幅広く、和洋中どんな料理にも合わせやすいなど、食前酒から食前酒、食中酒、食後酒までシーンを選ばないシードル。おいしいだけでなく、リンゴ由来の栄養が摂れるのも魅力です。シードルとの出会いが、食卓に幸せな時間を運んでくれることは間違いないでしょう。