日本を代表する生産地・山梨のワインの魅力の秘密をご紹介!
かつてワインといえばヨーロッパの輸入ワインを選ぶ人が多かったのですが、日本ワインのレベルも徐々に上がりつつあり、本場のワインに負けない品質のワインを提供できるようになりました。
特に近年の日本ワインの世界的な評価は高く、ワインコンクールで金賞を受賞することも、珍しくありません。
日本には300を超えるワイナリーがありますが、その中でも代表的なのが、山梨ワインです。今回はそんな山梨ワインを中心に、日本ワインの魅力をお伝えしましょう!
室町時代から始まった日本ワインの歴史
日本にぶどうが伝わったのは奈良時代から平安時代にかけてとされていますが、ワインとして文献に記録が残っているのは室町時代からです。
公家日記「後法興院記」には、「珍蛇(チンタ)」というお酒を飲んだという記述が残されています。
「珍蛇」はポルトガル語のワイナリーを意味する「Quinta(キンタ)」からきており、スペインやポルトガルから伝わった赤ワインのことと考えられています。
また、1549年にイエズス会の宣教師であるフランシスコ・ザビエルが鹿児島を訪れ、布教を考える地域の大名に、ワインを献上しました。その後、オランダやポルトガルとの交易が盛んになると、ワインはさらに日本に広まっていったのです。
ただし、ワインは当時としてはかなり貴重品で、一般の人が気軽に手に入れることはできませんでした。江戸時代になると鎖国によってワインの輸入も禁じられ、しばらくの間はワインも日本から姿を消していました。
国産のワインづくりが広まったのは明治時代
やがて明治時代になると、文明開化の波に乗って人々の生活も西洋化し、国が国産ワインの醸造を奨励するようになりました。
殖産興業政策を打ち出した明治政府の主導のもと、民間産業の育成の試みのひとつとしてワインづくりも行われ、山梨では藤村紫朗が1877年に県立葡萄酒醸造所を建設しました。
しかし、それに先んじて甲府でワインづくりに取り組んだ、山田宥教と詫間憲久という二人の民間人がいました。
行政による支援がまだない中にあって、二人はワインづくりに取り組み、その流れによって日本代表するワインメーカー「メルシャン」の前身となる大日本山梨葡萄会社が設立されたのです。
山梨が日本ワインの銘醸地として名高い理由
このように、山梨県は山田宥教と詫間憲久の二人が道を切り開いた日本ワイン発祥の地であり、ワイナリーの数も国内で圧倒的に多いことから、日本ワインの銘醸地として知られています。
果実酒の生産量自体は神奈川県が日本一ですが、原料のぶどうは輸入したものも含まれており、国産ぶどうを用いたワイナリーが最も多いのは、やはり山梨県です。
山梨はぶどう栽培に適した地で、生産されるぶどうの多くが、白ワインの原料となる甲州種です。全国各地でつくられる白ワインの原料となるぶどう品種の半分は甲州種で、甲州ワインの96%は山梨県産の甲州ぶどうからつくられています。
甲州種はピンクがかった赤紫色をしており、果肉に厚みがあって、クセのない繊細な香りが特徴です。酸味が少なく、穏やかな味わいなので、スッキリとした口当たりのよいワインを生み出すことができるのでしょう。
「世界最高のワイナリー50」にも選ばれる成長を遂げた日本ワイン
そうしたワインの長い歴史をもつ山梨県を中心に、日本ワインは今や世界的に高評価を得るまでに至りました。
ワインツーリズムに取り組む世界最高のワイナリー50を選出する「ワールド ベスト ヴィンヤード2020」では、長野県上田市にあるシャトー・メルシャン椀子(まりこ)ワイナリーが、見事30位に選ばれました。
「ワインといえばヨーロッパが本場」と言われ続けてきたワイン業界にあって、世界最高のワイナリー50に選ばれる日本のワイナリーが生まれたということは、まさに快挙ともいえるでしょう。
ワイン市場の中でも、日本ワインは急速に人気を高めてきています。
ボルドーやブルゴーニュといった世界の名立たる名産地のワインと並んでも、その中から選ばれるワインの1本に、日本ワインがあると言っても過言ではありません。
日本ワイナリーの3分の1が集まる山梨県の魅力
さて、日本ワインの原点ともいえる山梨ワインを体験したい場合は、どのような楽しみ方があるのでしょうか?
現在山梨には、日本ワイナリーの3分の1を占める、約80社のワイナリーがあります。それぞれのワイナリーによって味わいや趣が異なるため、「ワイナリー見学」をして、ワインの飲み比べをするのもおすすめです。
「醸造見学」だけでなく、「ワインのボトル詰め体験」や「ぶどうの足踏み体験」ができるワイナリーもあり、ワインづくりをより身近に感じられるでしょう。ワインの原料となるぶどうの収穫時期には、「収穫祭」などのイベントも開催されます。
山梨にあるたくさんのワイナリーを見学するには、専用タクシーなどを利用することもでき、そこでしか買えないレアなワインを求めてやってくる人もいます。
和食と相性がよく酸味が控えめで飲みやすい山梨ワイン
「ワインは洋食のときに飲む」と思っている方もいるのですが、山梨ワインは酸味が控えめで飲みやすく、和食とも相性がいいのをご存知でしょうか?
甲州ぶどうは柑橘系の繊細な香りで、スッキリと口当たりがよく、お刺身やお寿司との相性は抜群です。
また、意外に思うかもしれませんが、おでんやキムチ鍋などとの相性もいいんですよ!ワインを飲みながら鍋を囲むことで、日本酒を飲むときとはまた違った和食の楽しみ方ができるでしょう。
たとえば、魚介だしを使った寄せ鍋には、スッキリした白ワインやロゼワインがピッタリです。特にスパークリングワインは、和風だしと抜群の相性です。
日本食と日本ワインを組み合わせて、和食とワインの素敵なマリアージュを楽しんでみてはいかがでしょうか?
山梨県以外の日本ワインはどんなものが有名なの?
おいしい日本ワインを醸造している県は山梨県以外にもあり、北海道や山形県、長野県などが日本ワインの産地として知られています。
ワインを選ぶときに、ラベルに「日本ワイン」と書かれているのを、見たことがあるでしょうか?「日本ワイン」とは何かというと、国産ぶどうを100%使用して国内製造されたワインのことです。
そして、海外から輸入したぶどうや濃縮果汁を使用して国内製造されたワインは、「国産ワイン」と呼ばれ、法律上の表示が使い分けられています。
日本ワインはラベルに「日本ワイン」という表示があるので、すぐにわかるでしょう。
ワイン用ブドウの生産量一位など拡大を続ける北海道ワイン
北海道ワインは山梨ワインよりも50年ほど遅れてスタートしましたが、広大な土地を活かしてワイン用ぶどうの生産量日本一となり、道内には約30のワイナリーがあります。
ぶどうの花が咲く梅雨の時期に雨が降らず、収穫期に台風もなく、昼夜の寒暖差が激しい北海道の気候は、ワイン用ぶどうの栽培に適しています。
白ワインに使うヨーロッパ系品種を中心に栽培しているため、北海道といえば白ワインをイメージする人も、多いかもしれません。
北海道ワインの中でも「十勝ワイン」は特に有名ですが、北海道で初めてワインづくりを始めたのがこの十勝ワインで、1960年代に町おこしの一環としてスタートしました。他にも「ふらのワイン」や「おたるワイン」などがよく知られています。
ワイン造りにぴったりの気候を活かし、評判の高い山形県
さくらんぼの生産地として有名な山形県も、東北を代表する日本ワインの生産地です。
山形県の庄内平野を中心とする沿岸部は、海洋性気候で高温多湿。冬は北西からの強い季節風が吹きます。内陸部は盆地特有の温暖な気候で、夏は昼と夜の寒暖差が激しいのが特徴です。
このような気候はぶどうが新鮮な果実の味と酸味を保つのに適するため、おいしいワインが生産できるのです。国内外で注目されている山形県産の銘柄も、少なくありません。
山形県のぶどうづくりの歴史は古く、1892年に南陽市赤湯に、東北で初めてのワイナリーが誕生しました。
現在県内には14のワイナリーがあり、原産品種としてはデラウェアやマスカットベリーA、シャルドネ、メルロー、カベルネ、ナイアガラなどがあります。
ユニークなところでは、山林原野に自生する山ぶどうのワインなども醸造しています。
国際的コンクールでの受賞も経験!実力派の長野県
長野県もまた、知る人ぞ知る日本ワインの名産地です。
長野県は周囲を飛騨山脈(北アルプス)、木曽山脈(中央アルプス)、赤石山脈(南アルプス)に囲まれています。
雨が少なく、昼夜の温度差があり、土壌の水はけも良いため、ワイン用のぶどうづくりにとってはまさに最適な環境といえるでしょう。
2000年以降になると、長野県内には次々にワイナリーが誕生しました。近年は国際的なワインコンクールで長野県産のワインが毎年上位にノミネートされ、金賞を受賞したワインもあります。
長野県のワインづくりの歴史も古く、明治政府の殖産興業政策の一環として、果樹栽培とワインづくりが奨励されたのが始まりです。
原産品種としてはコンコードやナイアガラ、竜眼・善光寺ぶどう、信濃スパークリング、浅間メルローなどがあり、個性豊かなさまざまな品種のワインを楽しめます。
おススメワインとすぐに用意できる相性抜群のお料理のご紹介!
日本ワインの種類についてお話ししましたが、ここで特におすすめの日本ワインと、そのワインに相性抜群のお料理をご紹介しましょう!
ワインによって相性のいいお料理はさまざまで、香りや酸味と合うお料理と一緒に食すことによって、ワインのおいしさは何倍にも引き立ちます。ワインを冷やしている時間に、作ってみてはいかがでしょうか?
山梨ワインらしい、上品で落ち着いた和の味わいを感じたい方にオススメ
「2018 シャンモリ 山梨 内田農園産 甲州」は、インターナショナルワインチャレンジ2020で銀賞を受賞した実力をもつ、辛口の白ワインです。
まろやかな厚みとスッキリとした酸味に特徴があり、勝沼町下岩崎地区にある契約栽培農家・内田農園で、丁寧に栽培された甲州産を100%使用しています。
和梨や百合の花、香木のような香りがあり、時間とともにトロピカルフルーツの華やかさを感じることができるでしょう。
ワインに合うお料理として、「鮎の塩焼き」「煮こごり」などの和食が相性抜群です。「アジの南蛮漬け」も、甘酸っぱいタレと上品なワインの味わいがよく合い、おすすめの一品です。
飲みやすい甘口で老若男女を問わず大人気!北海道ワインの定番を楽しみたい方にオススメ
「おたるナイアガラ」は、北海道ワインが製造する、おたるワインで人気NO.1のロングセラーです。
生食用のぶどうとして馴染み深いナイアガラを使い、非加熱処理による伝統的生詰め製法を行い、まるでぶどうを食しているような生き生きとした素材の良さを楽しめます。
涼やかなマスカットの香りは男女を問わず好評で、ぶどう本来の爽やかな甘さの中に、冷涼な北海道ならではの透き通るような酸味が感じられるでしょう。
ワインとしてそのまま味わうだけでなく、氷を入れたグラスにナイアガラ(50ml)とブルーキュラソー(10
ml)、ジンジャーエール(90ml)を入れて、お好みでレモンを加え、爽やかなのどごしの「生ワインボール」を楽しむのもおすすめです。
国内外で高評価!日本を代表する山形のプレミアムワイン
「高畠 フニクリフニクラ 木村シャルドネ」は、国内外のコンクールで軒並み高評価を獲得する、山形県の高畠ワイナリーが製造する白ワインです。
キリッとした切れ味の中にも、豊潤で豊かな味わいをもつシャルドネ品種を使い、甘みとともにしっかりとした酸味を感じられる一品です。
新樽のスモーキーな香りと、とろけるような口当たりは格別!非常に密度の濃いぶどうを使ったワインなので、神秘的な味わいが飲み手を魅了することでしょう。
シャルドネのワインには、「白身魚のソテー」や「サーモンのムニエル」などのように、火入れをした魚料理がよく合います。樽からくるローストの香りと、少し焦げ目のついたバターの香りが、絶妙の相性です。
日本ワインの魅力についてご紹介しましたが、いかがでしたか?日本ワインがここまで高評価を受けていることを、誇らしい気持ちでお読みになった方もいらっしゃるかもしれません。
近い将来、「ワインといえば日本」と呼ばれる日が訪れることを期待して、まずは日本ワインと魚料理の妙を、お試しになってみてはいかがでしょうか。