極甘口から辛口まで!多彩な表情を持つドイツのぶどう“リースリング”
白ワインに使われるぶどう品種の一つに「リースリング」というものがあることはご存知ですか?一般的なワインに使われるシャルドネやソーヴィニヨンとは一味違った風味が味わえます。今回はリースリングの魅力や歴史、より美味しく味わうためのポイントをご紹介します。
そもそもリースリングってどんなブドウ?
リースリングは白ワインに使われる白ぶどうの一種です。ドイツのラインガウ地方がルーツで、多くのドイツワインに使われています。他にもフランスやアメリカ、オーストラリアなど世界各国で栽培されています。寒さに強いため涼しい地域で栽培が盛んです。
白ぶどうの原料としてはシャルドネが有名ですが、それに勝るとも劣らない良質なぶどう品種です。ただ、育てるのが難しいため生産量が少ないのと、栽培できる地域が限定されているため、シャルドネよりはマイナーな品種と言えます。
どんな香りや味がするの?リースリングの特徴
リースリングの歴史は古く、少なくとも15世紀には栽培が始まっていたと考えられます。18世紀になるとドイツ国内でワインの醸造が盛んになり、大量にリースリングの苗木が植えられました。ぶどうの収穫時期を遅らせることで糖分を増やす「遅摘み法」の技術の発展もあり、この頃には白ワインの原料としての地位を確立しつつありました。
リースリングは1つの房に多くの実をつける特性があります、かつては果実が大量に生産されていましたが、20世紀になると品質重視の考え方にシフトし、少量で高品質な果実が収穫できるような改良を加えられた品種が流通するようになりました。
リースリングの強みは甘口から辛口まで幅広く醸造できること。いろんな飲み口のワインを生み出すことができます。
白い花や洋梨のような上品な香りに加えて、「石油香(ペトロール香)」という石油っぽい独特の香りがほのかに漂うのが特徴。口に含むとしっかりとした酸味と透明感があふれるフレッシュな味わいが感じられます。
生産地や熟成具合によって驚くほど味わいが異なる
リースリングは寒さに強いため、冷涼な気候の国や地域を中心に世界中で栽培されています。同じ品種でも産地の風土によって風味が若干異なるのもリースリングの面白いところです。たとえば、ドイツなどの寒い地域で栽培されたものは熟したリンゴのようなしっかりとした酸味があり、バランスが良いワインを作ることができます。
オーストラリアなど比較的暖かい地域で収穫されるリースリングは柑橘類や桃のような、爽やかな香りと楽しめます。
成熟度合いによっても風味が異なります。若いぶどうから作ったワインは酸味が効いたフレッシュな果実味が、成熟した果実を原料としたものは甘口で豊かな風味が感じられます。
遅積みの果実は貴腐菌が付着して発酵することで、貴腐ワインの原料にもなります。通常の甘口よりもさらに甘い「極甘口」で、食前酒やデザートワインにぴったりです。
リースリングは栽培地域による違いや成熟度合いによる風味の変化が出やすいデリケートなぶどう品種。だからこそ、極甘口から辛口までという高い対応力を発揮するのです。
辛口から甘口まで!料理とのおすすめの組み合わせを完全網羅
ワインと料理には「マリアージュ(相性)」があります。一般的に赤ワインは肉料理など味が濃いもの、白ワインはシーフードや野菜などあっさりしたものが合うと言われています。やはりリースリングワインも海鮮系との相性がぴったりです。
ただ、同じリースリングという品種からできたワインでも辛口と甘口では合う料理が異なります。どんな料理にはどんなワインが合うのか?マリアージュを知っておけばワイン選びがしやすくなるし、料理もワインもよりおいしく感じられます。
辛口のものはブリの照焼やお寿司とよく合います。特に魚介類の中でも濃いめの味がするイカや貝類などと合わせるのがおすすめ。また、さっぱりとしているので、天ぷらともよく合います。
やや辛口のワインは白身魚、サーモン、海老あるいは寿司に添えられるガリとの相性がぴったり。蟹や魚を使った鍋やおでんなどにも最適です。また、ウインナーやソーセージなどをおつまみにして飲むのもおすすめです。
甘口のリースリングワインにはスパイシーな料理がぴったり。カレーや韓国料理、中華、エスニック料理のおともに最適。料理のピリ辛とワインの甘みがお互いを引き立ててくれます。
貴腐ワインなど極甘口はチーズケーキやモンブランなどスイーツによく合い、デザートワインとしておすすめ。他にもレバーパテやフォアグラとも相性ぴったりです。
ぜひ、ワインを選ぶ際には料理やおつまみとのマリアージュ(相性)を考慮してみてください。
実は9世紀から存在していたリースリング
先ほどリースリングは15世紀に栽培が始まったということをご説明しました。これはあくまで史料に則った説で、これ以前にもリースリングは存在していたと考えられています。アルザスワイン研究家のストルツ氏はすでに9世紀にはラインガウで栽培されていたという説を提唱しています。
843年にフランク王国が東西に分裂しました。その頃に東フランク王国ではライン川流域で白ぶどうの栽培が盛んになりました。当時のぶどうは降雨量が多いと花が落ちてしまい果実が収穫できないという弱点がありました。そのことから「Riesen(流れる)」と呼ばれるようになり、それが転じて「リースリング」という名前になったのだと考えられます。
やがて、ドイツの幅広い地域でリースリングの栽培が盛んになり、15世紀にはフランスに伝わったとされています。
かのシェイクスピアは「Strong Riesling makes strong action(強いリースリングは強い行動を生む)」という言葉を遺していて、いかに歴史が古く、多くの人々から愛されてきたのかがわかります。
ぶどうそのものは意外と小粒
リースリングというぶどうの特徴についてもっと深く掘り下げていきましょう。果実は黄緑色の皮に覆われていて粒が小さいのが特徴です。リースリングから醸造されたワインも美しく澄んだ黄緑色をしています。
酸味が効いた爽やかな味わいが特徴で、白ワインならではのフレッシュ感が楽しめます。一般的なワインは樽に入れて酸素に触れさせて一定期間熟成させます。その過程で発酵が進み糖分がアルコールに変化し、酸味が渋みに変わっていくのです。一方、リースリングワインは果実感を楽しめるようにするため熟成期間も短く、ステンレスタンクで保管してあまり酸素に触れさせないようにします。そのため、果実のフレッシュ感あふれる爽やかな飲み口となります。また、発酵があまり進まないのでアルコール度数も他のワインと比べると低くなります。
ただ、リースリングを使ったすべてのワインがこの製法で作られているわけではありません。
貴腐ワインの場合は果実がしっかりと熟してから収穫します。ぶどうは成熟すると糖分が多くなります。さらに、貴腐菌が表面に付着して水分が奪われるので味が濃くなります。そのため、甘くて濃厚で、豊かな風味が感じられるワインが出来上がるのです。
ちなみに「貴腐」とは、ぶどうの皮に貴腐菌(ボトリティス・シネレアというカビの一種)が付着した状態のことを指します。風味がより豊かに・上品になることから「高貴なる腐敗」と言われ、それを略して「貴腐」と呼ぶようになったのです。貴腐ワインは生育が難しく手間暇がかかるので、一般的なワインよりも高値で取り引きされます。
本場ドイツで愛されているリースリング
リースリングは9世紀という大昔に生まれ、世界各国で栽培されていますが、今でもドイツが名産地であることは変わりません。世界のリースリングの栽培面積の半分はドイツが占めていてトップシェアです。
ドイツでワインと言えば白ワインを指すくらいですが、それはリースリングの功績だと言えます。「ジェネレーション・リースリング」という若手醸造家団体が存在するくらい、ドイツでは名が知られる・愛されるブランドなのです。
ネームバリューはありますが、お手頃なのもリースリングの魅力です。ドイツ国内では4~6ユーロ、およそ500~700円というリーズナブルな価格でワインを買うことができます。安いものだと3ユーロ(400円)くらい。高級とされているワインでも1,000円くらいで買えます。
歴史が古くて世界的な知名度と人気があり、一方で誰もが手軽に美味しく楽しめるコストパフォーマンスの高さも持ち合わせている。リースリングはドイツをワイン大国に引き上げた立役者で、ドイツ人にとっては誇りです。
日本では1972年から知られるようになった。
歴史があるリースリングですが、日本に輸入されたのは1972年で意外と最近の話。というのも、外国産のワインの輸入が解禁されたのがこの年であり、他のワインとともにドイツワインも入ってきたのです。
その後、高度経済成長期でワインブームが興り日本国内で急速にワインが普及しました。「ドイツワイン=甘い白ワイン」というイメージを持つ方が多いのですが、これもやはりリースリングの影響と言えるでしょう。
先ほどもご紹介したように、リースリングワインは寿司や天ぷら、鍋やおでんなどの和食にもよく合いますので、日本の食卓にもぴったりのワインです。日本で白ワインといえばシャルドネやソーヴィニヨンのほうがメジャーですが、リースリングこそが日本人向けのワインと言えるかもしれません。
耐寒性が高いリースリングは日本、とりわけ北海道や東北など涼しい地域の風土にもマッチして、今では日本国内でも栽培されています。特に岩手県はリースリングの栽培が盛んで、他のぶどうとリースリングを交配した日本独自のぶどう品種も生まれています。
おすすめリースリングワインとすぐに用意できる料理・おつまみガイド!
ここまでリースリングのさまざまな基礎知識をご紹介してきましたが、やはり実際に飲んでみないとその魅力はわかりません。ここからはAEON de WINEが厳選した3種類のリースリングワインとそれにぴったり合う料理・おつまみをご紹介します。
いずれもワインと料理がお互いを引き立て合う最高の組み合わせとなっていて、ご満足いただけること間違いなし。ぜひ試してみてください。
フルーティでフレッシュ!スパイシーな料理とバッチリのリースリングワイン
まずご紹介したいのは「アーサー・メッツ リースリング」。日本人女性が選ぶ国際ワインコンペティション「サクラアワード」2015、2016年度連続でシルバーを受賞した輝かしい実績。アルコール度数は12.5度で若干高く、やや辛口ではありますが、日本人特に女性の方にも飲みやすいリースリングワインです。
グラスの中に広がるライムやバラのようなアロマに、ほのかにミネラル感がミックスした、芳醇な香り。フルーティでフレッシュな果実味が楽しめます。コストパフォーマンスも高く、「リースリングワインははじめて」という方にも入門用としておすすめ。飲み頃の温度は8~10℃です。
特にタイ料理やインドカレーなどスパイスが効いたエスニックな料理と相性ぴったり。牡蠣や海老、蟹などシーフードにもよく合います。
超貴重!とろけるように甘い希少なアイスワインで極上のスイーツタイムを
甘口の白ワインがお好きなら「マリエンゴールド・アイス・アウスレーゼ」がおすすめです。ぶどう1房につきスプーン1杯分しか取れない大変貴重な果汁を使っています。自然氷結した果実のみを摘み取り、凍ったままプレスするという特殊な製法で作られているので、手間暇がかかった希少価値が高いワインです。ハーフボトルだからアーサー・メッツ リースリングと比較すると割高にはなりますが、それだけの価値はあります。
アプリコット、パイナップルやいちごのような甘みがある果物のような香り。口に含むと密がたっぷりしたたる桃を頬張ったような甘みが広がります。それでいて酸味も程よく感じられる、バランスが取れた口当たりです。
甘みが感じられるのでフルーツやケーキなどのスイーツ、青カビチーズと相性抜群。飲み頃の温度は4~6℃なので、よく冷やしてお召し上がりください。
ソーセージなど幅広いおつまみに合う万能リースリングワイン
いろんな料理と合わせたいなら、「2019 ロング・ロウ リースリング」がおすすめです。南オーストラリアで醸造されたリースリングワインで、柑橘系の華やかな香りとトロピカルフルーツのような甘い香りのハーモニーが感じられます。キリッとした辛口で、ライムやシトラスに近い爽やかな味とグアバのようななめらかな余韻があります。
原産国のオーストラリアで開催されたワインコンテストで金賞3個を受賞。日本国内でもコンテストでダブル金賞を受賞したから、美味しさは折り紙付き。
飲み頃の温度は8~10℃。シーフードだけでなくソーセージやウインナーなど肉系の料理にも合うので、食卓ワインとしてもおすすめです。
いつもの白ワインとは一味違う!リースリングワインをお試しあれ
ドイツ人の誇りであるリースリング。長い歴史と幅広い対応力で知れば知るほど面白い、非常に奥深い世界観をもつぶどう品種です。そんなリースリングから作られたワインは、他の白ワインとは一風違った香りや味わいが楽しめます。和食にもぴったり合うから日本の食卓にもおすすめ。産地や熟成期間によって個性があるので、ぜひいろんな種類のリースリングワインを試してみてください。
AEON de WINEでは多種多様なリースリングワインを取り揃えています。もちろん、今回ご紹介した3種類のワインもお買い求めいただけます。興味がありましたら公式サイトをご覧ください。