歴史と革新!古きも新しきも入り混じり盛り上がる
ドイツワインで楽しんでみましょう!
ドイツはブドウ栽培の北限に位置するワイン産地です。その冷涼な気候から、豊かな酸味と繊細でエレガントな芳香を持つワインが生まれるのが特徴です。
かつてのドイツワインは甘口の白ワインが大半でした。しかし、現在ドイツで生産されているワインの約7割(2018年現在)は辛口となっており、その比率は年々上がっています。
ドイツでは白ワインだけでなく、ゼクトと呼ばれるスパークリングワインや赤ワインも数多く生産されており、その品質の高さと味わいが世界的にも評価されるようになってきました。
また、若手醸造家団体「ジェネレーション・リースリング」が結成され、モダンで革新的なワイン造りを目指して活動を続けています。
ダイナミックに変化し続けるドイツワイン。その基礎知識やドイツワインのブドウ品種、本場ドイツでのワインの飲み方などをご紹介しましょう!
もはや甘口だけではない!赤も辛口も美味しくなったドイツワイン
ドイツはブドウ栽培の北限である北緯50度付近に位置しています。その涼しい気候ではブドウの実がゆっくりと熟します。そのブドウから、綺麗な酸味と口当たりの良いワインが出来上がります。
繊細かつ高品質な味わいのドイツワインは世界をリードするまでになっています。かつてドイツワインの大半は甘口の白ワインでしたが、2018年現在で辛口が69%を占めるほか、赤ワイン用ブドウの栽培比率が33.8%にものぼるまでになっています。
かつてのドイツの冷涼な気候では10年のうち2~3年しかブドウが完熟しませんでした。そのためドイツでは、「ブドウを完熟させ糖度を上げた甘口ワインのほうが高級」という価値観が生まれたのです。
このような価値観を持っていたことで、1985年、オーストリアのワイン農家によるワイン不凍液混入事件が起こりました。ワインに不凍液を混ぜることでとろみと甘味が増すことを利用し、甘口ワインとして販売したのです。その結果、甘口ワインへの信頼は失墜しました。
しかし1990年代頃から見られた地球の温暖化により、ドイツのブドウも完熟するようになったのです。そのため完熟せず高くなった酸をカバーするために「ワインに糖分を残す(=甘口ワインにする)」必要はなくなりました。このような状況から、甘口ワインから辛口ワインへの転換が進んだのです。
同時に、温かい土地でないと育たない赤ワイン用ブドウの栽培もできるようになりました。その結果、ドイツにおける赤ワインの生産比率も上がってきています。同時に、スパークリングワインの生産も増えています。
一昔前では考えられなかった変化がドイツワインに起こっています。
現代ワインを引っ張っていくモダンで瑞々しい感性が生まれている
ドイツでは、ジェネレーション・リースリングと呼ばれる35歳以下の若手ワイン醸造家団体が2006年に結成されました。50人で結成されたこの団体も、今や500人を超えるほどまで成長しています。
ジェネレーション・リースリングでは、これまでのドイツワインのイメージを覆すモダンで革新的なワインを作ることで世界からも注目を浴びています。
注目されているひとつが、ドライで辛口なワインのことを指すトロッケンです。ジェネレーション・リースリングが作っているワインはトロッケンなワインが多く、料理にもペアリングしやすいことから人気を呼んでいます。
もうひとつ注目されているのは、伝統的なドイツワインとは異なるモダンなエチケット(ラベル)です。そのスタイリッシュなデザインは、すぐにはドイツワインとはわからないほどです。
人気が高まるドイツの赤ワインやゼクト
1979年、ドイツでは赤ワイン用ブドウ品種の栽培比率が11%ほどしかありませんでした。しかし2018年にはその比率が33.8%にまで上がっています。
その理由は、地球温暖化の影響によりドイツでも赤ワイン用のブドウが作れるようになったこと。とはいえフランスやイタリアよりも北に位置するため、豊かな酸味を持ち綺麗でエレガントな印象を持つワインが出来上がるのが特徴です。
このようなドイツの赤ワインは料理とのペアリングがしやすいのが特徴です。そのために世界中のレストランで提供されることも増えています。
ドイツと聞いてビールを思い出すかもしれませんが、最近ではゼクトも多く飲まれています。ゼクトとは、「20℃で3.5気圧以上、アルコール度数10%以上」を持つ高品質なスパークリングワインのことです。
今や、ドイツ人が飲むワインの2割はスパークリングワインです。1人当りの年間消費量にすると約4リットル。ドイツは消費世界一のスパークリングワイン大国となっています。
ゼクトに使われるブドウは、リースリングのほか、シュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)やシャルドネが中心。これらの品種由来である華やかな香りとさわやかな酸味を感じることができます。
ドイツでは数百円程度から高価格帯まで幅広い価格のものが売られているゼクト。そのシャープな味わいから日本でもゼクトファンが増えています。
ドイツワイン通への第一歩。本場の飲み方や基本知識をお伝えします!
ドイツワインには本場ならではの飲み方もあります。すぐに使えるドイツワインの豆知識をいくつか紹介しましょう
ワインのハイボール的な楽しみ方「ワインショーレ」って?
ドイツでは白ワインを炭酸水で割ったカクテル「ワインショーレ」を飲むことが増えています。カクテルと言っても炭酸水で割るので甘すぎず、夏にピッタリのカクテルです。ウイスキーを炭酸水で割った「ハイボール」の白ワイン版といったところでしょうか。
割り材に使うのは、天然炭酸水のゲロルシュタイナーがおすすめ。ミネラル分が白ワインの酸味を際立たせて、さわやかな味わいにしてくれます。ミネラル分が薄まってしまうので、氷は入れないで楽しみましょう。
限られた国でしか生産できないデザートワイン「アイスワイン」を楽しもう
デザートワインの一種であるアイスワイン。ブドウを真冬まで収穫せずにおき、凍って果実が凝縮され糖度が高まったブドウから作られた極甘口のワインです。口に含むと芳醇な甘さが広がるアイスワインは、ドイツ、オーストリア、カナダの3カ国で生産されたものだけが名乗ることができる特別なワインです。
アイスワインには飲み方にもこだわりがあります。適温は10度以下ですが、あまり冷やしすぎるとその芳醇な甘みが感じられなくなりますので注意しましょう。
注ぐグラスは、シャンパンを飲むときに使う縦に細長いフルートグラスがおすすめ。アイスワインを注いだら、グラスを手のひらで包み込むことで香りが立ち上ってきます。
飲み頃の温度や注ぐワイングラスに気をつける必要はありますが、食後のデザート代わりに試してみる価値はありそうです。
お店で言えば一目置かれる、ドイツワインの基礎知識
ワイン用のブドウといえば、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネなどといった品種が頭に浮かぶと思います。しかしドイツでは緯度の違いから、それらとは異なるブドウ品種が多く栽培されています。
ドイツ国内で最も栽培されている「リースリング」
ドイツを代表する白ワイン用のブドウ品種はリースリングです。ドイツのブドウ栽培面積の約60%を占めドイツワインの主要品種だといえます。「ジェネレーション・リースリング」も、ドイツワインの象徴として「リースリング」の名前を冠しているほどです。
遅れて成長するため栽培するのは難しいところもありますが、さわやかな辛口ワインから甘口ワインまで、あらゆるタイプで高品質なワインを作り出すことができます。またリースリングは酸味が強いことから、長期的に熟成できるブドウ品種としても有名です。
1955年に誕生したニューフェイス「ドルンフェルダー」
色の濃い赤ワインを作るために、交配して新たに生まれたブドウ品種がドルンフェルダーです。ドイツでは、ブドウを人工的に交配し品種改良を目指すことが盛んで、ドルンフェルダーもその1つです。
タンニンが滑らかで酸味がソフトなワインが出来上がるという特徴を持っているドルンフェルダー。栽培や醸造の手間があまりかからず収穫量が安定していることから、多くの生産者に好まれています。ドルンフェルダーはシュペートブルグンダーの次に多く栽培されるまでになっています。
スマートなドイツワイン選びをサポート!地域について知ってみよう
フランスのボルドーやブルゴーニュのように、産地によってワインの傾向が大きく異なることがあります。ドイツワインを産地で分けるとすると、ラインガウ、モーゼル、フランケンの3つに分けられます。
高品質なドイツワインが作られるラインガウ
ライン川に沿った約40kmの南側の土地がラインガウです。北緯50度に位置しながら、背後の山々が北風を防ぎライン川が太陽光を反射し温暖さを保っていることで、ブドウ栽培に適した土地となっています。
この地で栽培されているブドウ品種のほとんどはリースリング。黄土層を中心とした土壌はリースリング栽培に適しており、英国ヴィクトリア女王も愛した最高品質のリースリングワインを生産し続けています。
65度にもなる急斜面でブドウを栽培しているモーゼル
モーゼル川沿いのほか、ライン川沿い、ルーヴァー川沿いに畑が広がるワイン産地がモーゼルです。急斜面にブドウ畑が分布しており、ヨーロッパでもっとも急な65度の急斜面のブドウ畑で知られています。
モーゼルにおけるブドウ栽培面積の半分以上はリースリング。石灰質がない痩せた土壌のためにブドウの木の根が深くまで伸び、ミネラルたっぷりのワインを生み出します。
コクが強く、引き締まった辛口ワインを生み出すフランケン
マイン川の支流に位置し河岸の南向き斜面に畑を持つドイツワイン産地最東端がフランケンです。ミュラー・トゥルガウやシルヴァーナーといったブドウ品種を中心に栽培されているのが特徴です。
フランケンで作られるワインはコクが強く辛口で引き締まった味を持っています。そのためドイツでは「男らしいワイン」と言われることがあります。
かの文豪ゲーテにも愛飲されていたというフランケンワイン。ボックスボイテルと呼ばれる丸いボトルが目印です。
おすすめドイツワイン。それにペアリングしたいおすすめ料理をご紹介!
甘口から辛口までバラエティに富んだドイツワイン。その中でも、おすすめの辛口白ワイン、赤ワイン、ロゼワインをご紹介しましょう。また、それぞれのワインにペアリングできるおすすめ料理も合わせてご紹介します。
ドイツワインのトロッケンを味わいたいというアナタに
辛口白ワインは、トリアー慈善連合協会が作る「ホスピテン・リースリング・QbA・トロッケン」をおすすめします。
作られるワインは典型的なモーゼルタイプのトロッケン。豊富な果実味と程よい酸味を持ったリースリングワインです。なお、ワインで得られる収益は慈善事業のために使われています。
おすすめのフードペアリング
トロッケンのリースリングワインには、クセの少ない白身魚が良く合います。例えば、舌平目のムニエルや生サーモンがおすすめ。リースリングはレモンの果実味を感じるので、レモンドレッシングをかけたサラダやカルパッチョもマッチします。
また、脂身の少ないお寿司、特にねっとりとした食感を持つホタテの握り寿司はリースリングのペアリングは最高だと言えます。
リースリングワインの持ち味は透明感です。そのため、全体的に素材を活かす料理が良く合うでしょう。
モダンスタイルのドイツ赤ワインを楽しみたい方へ
ドイツ赤ワインの今を楽しみたい方には、「ガイガー アンド ゾーネ トライプシュトッフ ミセス レッド」がおすすめです。
フランケン地方のワイナリーでありながら丸いボトルではなく一般的なワインボトルが使われています。エチケットもモダンなデザインとなっており、現代ドイツ赤ワインを感じさせてくれます。
ブドウ品種は、シュペートブルグンダー。バランスの良い酸味と、フルーティーな香りが印象的なワインです。
おすすめのフードペアリング
フルーティーな赤ワインである「ガイガー アンド ゾーネ トライプシュトッフ ミセス レッド」は、肉料理全般とよく合います。とくにおすすめなのは牛肉のロースト。そのほか、クセがあるくらいのチーズにも良く合います。
また、赤身マグロのにぎり寿司も、シュペートブルグンダー(=ピノ・ノワール)と絶妙にペアリングできる料理です。
見て飲んで楽しめるワインを試してみたい方へ
ロゼワインなら、「ブリー・ロゼ・ピノ・ノワール/ピーターメルテス」をおすすめします。「見て、飲んで楽しむワイン」をコンセプトに開発されたこのワインは、見た目もお洒落なところが特徴です。
新鮮なラズベリーの香りと爽快でフルーティーな味わいを持ち、柔らかい酸味と心地よいフィニッシュを感じるワインです。
おすすめのフードペアリング
軽い揚げ物や白身魚のカルパッチョとの相性が良いのが特徴です。また、塩でいただく天ぷらや鳥の手羽焼きといった和食とのペアリングもおすすめです。
伝統と革新。両方の良さを併せ持つドイツワインはこれからも目を離せない!
長い歴史と伝統を持つドイツワイン。その歴史と伝統に裏打ちされながら、進化をし続けています。辛口から甘口、変わり種ワインまで、幅広く取りそろえるドイツワインの魅力からは今後も目を離すことはできないでしょう。